●スノーコーチ・ツアー(2)

スノーコーチの力強いタイヤは、アサバスカ氷河にぐんぐん近づいている。時々車窓から、深いクレバスが見えることがあり、ゾーッとする。このクレバスに落ちる事故が、けっこう多いのだそうだ。シーズン中は、氷河ハイクをしているグループもよく見かけるが、こちらはプロのガイドがついているので心配はない。

ついに氷河の上に来た。氷の上に降りる瞬間は、やっぱりドキドキする。7回目で、初回ほどの感動はなくなっているかもしれないが、2回目には2回目の、7回目には7回目の感動があるものなのだ。

初めて氷河の上に降りたシュテファンの喜びようといったらなかった。彼は比較的無口で、わーわー感動を言葉で言い表すほうではないが、顔全体がワクワクしている。さっそく小さな水の流れを見つけて、ビデオカメラをまわし始めた。彼はこういう水流システムが異常に好きなのだ。

私は、氷河を一回り見回して「おおー、また帰って来たぞ〜」という感慨にひたっていた。初めてここに降り立った時は、こんなに何度も訪れることになるとは、夢にも思っていなかった。私とカナダのなれそめとなった、海外初取材の時のことである。それからの年月を思うと、今ここにいる自分を取り巻く状況の違い(永住権を持ち、カナダに住んでいる)は、まさに夢のようだった。

ここまで来ると、コロンビア大氷原からアサバスカ氷河が流れ出している部分が、たいへんよく見える。あの淡いブルーの色合いといい、亀裂の入り具合いといい、非常に興味深い形状をしていて、いつまで見ていても飽きないくらいだ。確かにこの部分を見ていると「氷河は流れている」ということを実感する。足の下のこの氷も、年間25mの速度で、ゆっくり動いているのである。

シーズン前で、しかも今日最後のツアーだったので、私たちはかなり長い時間、氷上で楽しむことができた。いつもはだいたい10〜15分くらいだが、今日のドライバーは全然集合コールをかけないのだ。私たちは氷原に近い方に行ったり、氷河の端に行ったり、スノーコーチの後ろにまわってみたり、あらゆる場所に移動して、景色を楽しんだ。

パンフレットによれば、約150年前を境に、それ以降に降った雪は年々増加する大気中の公害物質を含んでおり、それ以前に降った雪が固まった氷から溶けた水は、最も純度の高い自然の水なのだそうだ。
ここの小さな流れの水が、どこから溶けた水かは知らないが、空き瓶を持ってきて、氷河の水を持って帰る人がよくいる。私は毎回忘れていたのだが、今回はフィルムのケースがあったので、それに入れて持ち帰った。
でも、やはりその場で味わうに限る。後でなめてみたら、プラスチックの味になっていた。


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