●ジャスパー到着

初めてジャスパーに来たのはもう10年以上も前のことだが、この町はあれからほとんど変わっていない。うれしいくらい変わっていない。
カナディアン・ロッキーの観光地は、バンフ国立公園とジャスパー国立公園を中心に、ヨーホー国立公園やクートネイ国立公園なども含んだ広大な大自然の中にある。観光の2大拠点がバンフとジャスパーだが、この10年間に激変し続けたバンフに比べ、ジャスパーはいつ訪れても、バンフの変貌などどこ吹く風といった感じで、静かでこぢんまりと落ち着いていた。

いや、細かい点を言えば、変化はしている。アジア系レストランはずーっと和食1軒・中華1軒だったのに数年前に韓国レストランができたとか、2階建ての小さなショッピングモールが2つできたとか、3年前取材に来た時は夕方4時頃に必ずエルク(大鹿)の群れが町の中を大移動し、私とカメラマン氏はそれを「パレード」と呼んでいたが、昨年エルクが町から一掃されてしまい、もう「パレード」は見られなくなったこと…などである。

しかし、これらは町全体と周囲の自然のたたずまいから見たら、ほんの小さなことだ。
長いだけであとは何もないホーム、ホームから見える山々、澄んだ空気、相変わらず小さな駅舎(外側は改修中だったけど)、何も変わっていない。そうそう駅前にあったブラックベアの人形は、場所が少し北に移っていたっけ。駅前のメインストリート、Connaught通りもほとんど変わっていない。三角屋根のホテルと幾つかのレストラン、お土産屋をのぞいている観光客、おとぎ話に出てくる森のお家のようにかわいい観光案内所・・・。
まずはここへ足を運んだ。

旅先では、どこでも必ず真っ先にインフォメーションに行くのが私の習慣だ。これをしないとどうも落ち着かない。トラベル・ライターという仕事柄、ついそれがクセになり、プライベートな旅でも習慣になってしまったのであるが、これがまた後でいろいろと役に立つのである。だから我が家には旅先で集めた資料やらパンフレットやらが山のようにある。それで置き場所に困ったりするのだが、捨てられない。もちろん料金など刻々変わるものは、記事を書く前に必ずウェブサイトなどで最新情報を確認するが、それはそれとして、こうしてまた来た時に新しいものを入手するのは、私の旅のアップデートなのである。

インフォメーションでは、まずカウンターに行って、ジャスパー周辺とカナディアン・ロッキーのマップ、そして東部へ行くルートマップをもらった。このルートマップは、“新しいトランス・カナダ・ハイウェイ”と言われるYellowhead Highwayをたどるものだった。
従来のトランス・カナダ・ハイウェイは、第1回で説明したように、ビクトリアとセント・ジョンズを結ぶ1号線だが、このYellowhead Highwayは、アラスカに近い太平洋岸のプリンス・ルパートとウィニペグまでを北寄りのルートで結ぶ16号線である。一部、BC州内を縦に走る5号線にも枝分かれしている。なぜYellowheadという名前かというと、この道路のマークが黄色い人の横顔なのである。名前が先かマークが先かは、不明だけど…。

実は出発前に、東部と西部に分冊化されたドライブマップを買っておいたのだが、これがひどい編集で、ウィニペグまで行くには、このルートマップのほうが断然役に立った。横長のマップで、ジャスパーからウィニペグまでが一目で分かるからである。

どんなにいいガイドブックを持っていても、やはりマップは地元で入手するに限る。特に、日本人旅行者のほとんどが持っている有名ガイドブックの地図はアテにならないので、マップだけは現地でもらっておいたほうがいい。私は、ルートマップやエリアマップはインフォメーションで入手し、散策用のタウンマップなどは、ホテルのコンシェルジェでもらうようにしている。別に宿泊客でなくても、そのような顔をしていけば、拒絶はされない。

カナダ各都市にほとんどある『WHERE』や『Visitor's Choice』のようなフリーペーパーも便利である。これらにも詳細な地図が出ているし、その時期のイベント情報なども載っているからだ。もちろん、観光地、ホテル、レストラン、ショップの情報は満載されている。ホテルの客室やフロントに設置されているほか、お土産屋などでも入手できる。

インフォメーションでは、さらにPrivate Home Accommodationガイドもゲットした。Private Home Accommodationとは、いわば民宿のようなもの。カナダでは、チープな宿としてベッド&ブレックファースト(B&B。こちらは朝食付き民宿)が有名だが、ジャスパーの場合は協定により朝食は付かない(付ける所も数件あるが)。これは、ジャスパー内のレストラン保護のためではないかと思う。Home Accommodationで朝食を出してしまったら、誰も外に食べに行かなくなるからだ。小さな町だから、お互い助け合って共存していかないと…。

このPrivate Home Accommodationガイドは、毎年発行されており、広げると約90軒の民宿情報が一覧になっている。料金は変更になっていることもあるので、候補を決めたら、全部電話して確認したほうがよい。たしかインフォメーション内に、無料で予約用に使用できる電話があったと思う。
これらの宿には、ログキャビン風やチロル風など素敵な外観の家が多いので、歩いて実際に見てから決めるのもいい。入口に「Approved Accommodation」という看板が出ているがその民宿である。さらに「Vacancy」(空室あり)「No Vacancy」(満室)などの表示を出しているところもある。

一般に女性一人でも安全・・・と言いたいのだが、実は3年前の取材中に、とんでもない話を聞いている。


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