●ホームステイ(4)‥‥料理事件 前編
先週の洗濯機事件も悲惨だったが、この料理事件も、思い出すたびに泣けてきそうになる。
ホームステイもまる2カ月が過ぎた8月。夏休みシーズンとあって、ホストマザーはさらに2人の学生を受け入れていた。日本と韓国の女子大生である。別に彼女がお金を目当てにしたわけではない。短期留学生が増えるこのシーズンは、ホストファミリーが足りなくなるので、エージェントから頼まれるのだそうだ。
既にメキシカンの女の子は帰国していたので、あと1人分は空いているが、もう部屋はないはず。いったいどこにステイさせるんだろう?と思っていたら、娘のアリエルが、キャンプに行ったり、父方の祖父母のところに長期で泊まりに行ったりするので、子供部屋を使うのだそうだ。エリエルが家にいる時は、ホストマザーの部屋で一緒に寝るのだそう。びっくりだった。でも、エージェントから、そのようにしてほしいと頼まれるんだって。まあ、子供部屋といっても、家具は全部大人サイズだったので、問題はないのだろうが・・・
だんだん分かったことだが、ホストマザーはこの家に、私が来る2カ月前くらいに引っ越してきたのだそうだ。アリエルに喘息の持病があるので、いい環境を求めて、引っ越しを繰り返したらしい。時には周囲の住環境が悪かったり、時には隣人がうるさかったりで、なかなか落ち着けなかったようだが、今回のこの家は気に入っているようだった。
私が来て間もなく、ホストマザーは3週間の夏休み(法律でこれだけ取れることになっている)を取ったが、長期旅行に行くわけでもなく、そのほとんどを家事や掃除に費やしていた。そして、同僚を招いて、ハウス・ウォーミング・パーティー(新居披露パーティー)を開いた。
その後もキッチンやリビングなど、人が集まるところは、よく掃除をしていた。特に床は念入りに磨いていた。私も自分の部屋は自分で掃除し、時間がある時はキッチンのお掃除なども手伝っていた。私の印象では、そう新しくもないこの家だが、ホストマザーは、自分が手をかけることで、少しでも快適に住めるようにと頑張っている感じだった。
さて、話はちょっとさかのぼるが、メキシカンの子がまだステイしている時、ひょんなことから私がお寿司を作ることになった。寿司といっても海苔巻だけど、これがカナダ人には結構ウケるのだ。たしか、メキシカンの子のお友達も呼んで、みんなに日本料理をふるまうとか、そんなことだったと思う。
そのお礼ということで、今度は彼女たちが帰国する前に、メキシカン・ディナーの日が設けられた。お友達と2人で、トルティーヤや豆料理などを作ってくれ、みんなでおいしくいただいた。
それから、帰国前に一度はお国の料理を作ってみんなにご馳走する、というのが、そこのホームステイでの慣例になった。
台湾の学生Yさんは、まだカナダにはいるが、ESLの夏のタームが終わる8月末でホームステイを変わるということで、家族と学生全員がいる8月後半の日曜日が、台湾ディナーの日になった。
その日、私は外出していたが、帰ると既にテーブルはきれいにセッティングされていた。
「おっ、なかなかやるじゃん」と思いつつ、よく見たら、点心などは出来合いのものを買ってきて並べてあり、自分で作ったのはご飯とスープだけだったが、それでもおいしくできていた。
夕食後は、Yさんがこのためにわざわざ買ってきた正式な中国茶のセット---急須ととても小さい湯のみ---で、ウーロン茶をいただいた。これもおいしかったが、ホストマザーはその夜、眠れなくて大変だったらしい。
いずれにしても、予想以上の出来で、私はちょっぴりYさんを見直していた。
その数日後、帰宅すると、またもやホストマザーが、キッチンでため息をついていた・・・